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波状雲と天気の変遷
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波状雲とは海の波のように見える雲のことをいいます。

巻層雲・巻積雲・高層雲・高積雲・層積雲・層雲に現れ1年を通じて比較的よくみられますので
特に珍しい雲ではありません。

空や雲を見ない方達にとっては珍しい雲とされているそうですので、
波状雲はポピュラーであることと、天気との関係を紹介したいと思います。

(時々ユルイ語りになりますのでご了承ください)
(さらに勉強をして後日また書きなおすことがあるかもしれませんがよろしくお願い致します。)

波状巻積雲
ジェット気流の影響でできた波状巻積雲。


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〜波状雲の発生メカニズム〜


大きく分けて2つあります。


1.密度の違う空気(暖かい空気と冷たい空気)が上下で重なり、
 またその両方の空気層の風向や風速が異なり(風のシアーがある状態)、さらに湿っているとき。

 
波動の上昇域で雲ができ、下降域で雲が消えるので波のようになります。
(雲が密着しているときもあります。)

温暖前線面や天気図には書いてないような小規模な前線面で発生しやすいです。
(小規模前線:特に寒候期、関東地方の南岸〜南海上にできる風の収束域や
太平洋沿岸部に吹く北東気流(北寄りの湿った冷たい空気:寒流が主な成因)によるもの)
高度低め高積雲の波状雲
高度が低めの波状高積雲。
移動性高気圧が東に抜け、西から前線を伴った低気圧が近づいている時の発生です。

前線面に出来た波状層積雲
日本の南岸に沿うように前線が停滞。前線面にできた波状層積雲。



2.強風が山脈に対して直角に越える時にできる山岳波によるもの。
 特にジェット気流が強くなる冬、山頂付近に逆転層ができて空気が湿っている時に発生しやすい。

 地形効果として山岳波以外では、地形性巻雲というものがあります。
 その雲底付近が波状になったり、地形性巻雲自体が波状雲になったりします。

 ・地形性巻雲…衛星雲画像の用語で、山脈の風下側に発生する停滞性(ずっと動かないようにみえる)巻雲のこと
  (「気象庁衛星画像の解析と利用」から抜粋)     
    地上から見ると巻層雲や巻積雲、濃い巻雲にみえることが多いです。

   さらに、山の稜線にそってスパッと雲が切れたような断層状の雲になることが多いです。定常波ということからずっと動かないことがあるので
   不思議な雲に思われることが多いですが、そんなに珍しい現象ではないです。

「気象衛星画像の解析と利用」から一部PDF(H12年)



波状巻積雲
衛星から見た地形性巻雲が地上から見た時に巻積雲の波状雲になっているパターン。


 



そのほか、上下気層の空気の速度差と摩擦力でもできます。

(移動性高気圧で暖まった空気の上に気圧の谷からの南西風が吹く時、
低気圧後面の寒気の上に異なる性質を持った北西の風が吹く時など)



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〜波状雲の発生〜


波状雲は天気が移り変わる時に発生することが多い雲です。

天気が悪い時からよくなる時。
逆に、
天気が良い時から悪くなる時。

雲を見て天気を予測する観天望気としては一般的に「天気下り坂の雲」と言われていますが、
天気が良くなる波状雲もあります。
波状雲で観天望気をするときは注意が必要です。




…前置きが長くなりました!

次は写真と天気図で波状雲を紹介します。


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〜天気下り坂の波状雲〜


発生しやすい場所:前線や低気圧の前面数百キロのあたり(巻層雲や高積雲・高層雲)
         低気圧が近づくと層積雲で出やすい。

天気下り坂の波状雲は雨域から少し離れたところに現れることが多いです。








2005.2/18 9:00(日本時間JST)埼玉北部 西側を撮影

きれいな層積雲の波状雲です。(少し高積雲寄りかもしれない)
西から東に風で流されていたのを覚えています。
終日この波状雲が発生していました。


波状層積雲(天気下り坂)
この雲は8:00ころから発生。
波状になる前はぼやけた高積雲でした。その後、高積雲の波状雲になり、
高度が下がって、高度高めの層積雲となりました。

この時、羽田空港で観測された層積雲は5000ft(約1500m)だったので、この写真の雲は埼玉北部
ということから北側に位置するので高度はもっと高い感じです。
衛星画像で見ても関東で雲がかかっている状況でした。

気象庁衛星可視画像↓
衛星可視画像
この当時まだGOESだったんだよね。なつかしい。
(00Zは日本時間JSTでいうと9:00)

ここで気象庁発表の速報地上天気図
2/18 9:00JST↓
大陸から張り出す高気圧の中心が北に偏っている(北高型)。関東から西で等圧線の走向が東西に走る形なので
高気圧は時計回りに吹き出していることから東寄りの風が吹きやすい。そして寒くなるパターン。

日本の南海上では停滞前線があり、東シナ海から黄海付近にかけて等圧線が北に張り出した気圧の谷がある。

地上天気図
衛星画像と合わせてみると、南岸にかかっている雲はこの前線由来というよりか、
東寄りの北東気流が主だとわかる。

ということで、地上では東寄りの風が吹きやすい気圧配置で関東で曇っていることはわかったんですけど
上空の風が知りたいので、
ここでウィンドプロファイラ(上空に電波を出して空気の屈折率の揺らぎで電波が散乱したもの一部をとらえて風を観測)
をみてみる。

気象庁ウィンドプロファイラ↓
ウィンドプロファイラ

非常に見づらくてすみません!8:00くらいから波状雲の発生だったのでそのあたりをみると、
高度1kmより下層では弱い東風成分の風が吹いているのがわかる。
これは気圧配置で見た「北高型」由来の風。

その上空では少し乾燥した層があり、そのさらに上では弱い南西寄りの風が吹いている。
そのまたさらに上空は西風が吹いていて観測がまばらなので乾燥していることが読み取れる。
これをみても大気が何層にも重なっているのがわかる。

2kmあたりで南西寄りの風が吹き、湿っている(ウィンドプロファイラは湿っていると風の観測が可能となる性質)
のでここらで雲の発生があると思われます。




そこで湿り域をみるため、エマグラムをみてみる。
関東で観測している館野は茨城だけど、全域で雲が出ているので近似値とします。

2/18 9:00JSTエマグラム(ワイオミング大学のデータを使用)↓
エマグラム
色々落書きしてあります…。ちょっと埼玉と茨城とは大気の状態が違う感じなのですが、
観測地との緯度がだいたい同じなので参考にします。

雲の発生という観点に注目すると、
館野ではだいたい2273mから1700mの間が湿っている(気温(右側のグラフ)と露点温度(左側のグラフ)がくっついてる)
のでここで雲ができています。
その上の逆転層もあるので高度的に層積雲の発生だと思われます。


これをみると雲の発生は北東よりの下層の風と上空の風の間というより、
湿潤層の風の弱い空気層をはさんだ上下の気層の作用で発生してる感じ。
でも風向風速の細かいデータをみないと何とも言えない。


ここで、埼玉の波状雲の発生を考察すると…
またまたウィンドプロファイラ↓
wp

関東は9:00時点では北東気流下であることは確認できる。
1〜1.5km付近では東よりの風が吹き、
その上空では南西寄りの風が吹いており、さらにその上では乾燥した西寄りの風が吹いている。


熊谷のウィンドプロファイラによると、波状雲発生前である8:00前までは下層では北西の風が卓越していたけど、
それ以降は弱い東寄りの風に変わっている。…ということは北東気流がなんらかの作用を起こしたと考えられる。

地上付近の弱い北東気流より上空、2km付近の風はそれを境に西風から南成分の風に変わった。ので、
地上付近でブレーキがかかりそれによって大気にしわができた感じ。
上層にも伝播した可能性があるね。。(弱い上昇流などで)
(…図では見づらいけど、上昇成分が認められる)その結果、上層の一般流である乾燥した西風との
間で波動が起こったと思われます。雲の発生は湿った気層だったからと考えます。


乾燥した西風と地上の北東気流の間の、南西寄りの風の中での雲の発生が濃厚となってきました。


見る順番が逆になってしまいましたが、高層天気図で概況を調べます。

2/18 9:00JST気象庁発表の850hPa(1500mくらいの高度の天気図)と700hPa(3000m位の高度の天気図)の実況天気図
850.700
(通常は200hPa→300hPa→500hPa→700hPa→850hPaと上空から見ていくのですが、説明のため
逆バージョンで失礼します。)

850hPa天気図では日本海に中心をもつ高気圧圏内での北西風が関東で吹いていますが、
南海上では高気圧の南側縁辺部の低気圧へ吹き込む風が吹いています。
等温線傾度も少しあるので(気温(点線部分。オレンジの線は0℃と-6℃)が不連続になっているので)
弱い前線のような感じになっています。
青くぬってあるところは湿り域です。


700hPaでも沿海州の西側から朝鮮半島沿岸部にのびるリッジ(気圧の峰)があり、
特に北日本から東日本は高気圧性の流れです。

関東付近は北西流となっていて高気圧性の流れになっています。
南海上では南寄りの風になっており、南岸で収束するような流れになっています。


ここまでみると3000mくらいの高さまでは西日本以外高気圧圏内であることがわかりました。

そして500hPa天気図(実況図ではなく、高度(m)と渦度(地表面に対して空気の回転がある流れの図)
500渦度
青いギザギザはリッジ(気圧の峰)で地上天気図でみると大陸の高気圧に対応、
赤い線はトラフ(気圧の谷)で、地上天気図では北に張り出した低圧部に対応してると思われます。
みどりの線はおおざっぱな渦度0線(強風域)
日本付近は特に北日本は北西流、そのほかは東西流で、マイナスの渦度(高気圧性の回転)
なので500hPaでもだいたい高気圧圏内。
ちなみに図はないけど、300hPaと200hPaもそんな感じでした。

こうみると、総観スケールでは高気圧域とみれるので、関東の曇天は局地性が高い雲が発生している、ということになります。
やはり冷たい空気が北東気流として流れ込んで上空の乾燥空気との間に雲が発生していると思われます。

波状雲の特徴からみても違う気層の境界面で摩擦などの作用で発生するので、そのような状況に合致すると考えます。




長くなりましたけど、その後の天気は前線に低気圧ができ南岸を東に移動して、南岸低気圧となり、
次の日は関東北部は雪になりました!

層積雲のすきまのない波状雲は天気下り坂の傾向があります。




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〜天気が良くなる時に発生する波状雲〜


発生しやすい場所:低気圧が抜けた後、上空の南西風が残っている時の寒気流入があるところ
         低気圧が抜けた後、後面の高気圧からの北西風(上空の風)が吹き、寒気流入のあるところ

 





2004.12/5 8:00JST 埼玉北部 東側

若干積雲のような厚みのある層積雲で、ダイナミックな波状雲になっています。
この時、地上ではかなりの強風が吹いていました。
爆弾低気圧が東に抜けつつある時の発生となりました。
層積雲の波状雲

ここで気象庁発表の速報地上天気図↓
地上天気図

等圧線がかなり混んでおり、地上ではかなり風が強いことがわかります。


そして、気象庁発表の衛星可視画像↓
衛星雲画像
関東南部では低気圧後面の寒気が入ってきており、雲がまばらとなっています。

風が強いと波状雲が出やすいのか、それとも上空との関係でなのかを見るために
気象庁のウィンドプロファイラをみてみる。
wp
写真では8:00JSTなので、そのあたりをみると、
多少下降流が確認される。もしかしたら少し雨がパラついていたかもしれない。

2kmくらいから下層は北西寄りの風で、それより上層は南西風となっています。

下層の北西風は、寒冷前線が抜けて、寒気が入ってきた様相。時間を進めてみていくと、
前線面が上空へ上がっていくのが読み取れます。

その上空は、西に傾いた気圧の谷からの南西風だと思われます。(天気図なし)
そして上層の乾燥域が下降流により下がってきていると考えられます。

10:00くらいまで
上下で風向風速差があります。この北西寄りの風の気層と南西寄りの風の気層の間で波状雲が発生したと思われます。

波状雲形成に強風が一役買ったか、詳しいことはデータ不足でわかりませんが、
積雲が風にながされて層積雲になることがあるので、対流で上昇流域で雲が発生・下降流域で雲の消散
があることを考えれば、対流を保ちながら流される過程で雲が長くなることも考えられます。
写真の雲は積雲寄りということから、強風も一因だと思われます。






2014.11/3 8:40JST 関東南部 南側

写真の下のほうにはキレイに並んだ高積雲の波状雲があります。ウツクシイ!
(写真の上のほうには層積雲)
ACSC

まず9:00JST気象庁発表の地上天気図↓
地上天気図
こちらも爆弾低気圧ですね。。。
その低気圧が抜けたときに発生した雲です。

写真の雲はレンズ状にもなっている波状高積雲ですので、風の要素もあったと思われます。

衛星雲画像赤外画像(tenki.jpより)↓
赤外画像
赤外画像なので可視画像と違い、雲頂温度を観測するので、
下層雲は暗く、中層雲は薄く、上層雲は白く見えます。
ので日本付近に雲が発生しているのですが、見づらくなっています。

関東の東の沿岸部にかかっているのは前線後面の中層雲です。
こちらは風の影響で流されたようになっています。
このようになるときはレンズ雲が出やすい。

では波状雲はどのようにできたか、エマグラムで見てみます。


ワイオミング大学のデータから抜粋
2014.11/3 9:00JST
エマグラム
2000m付近と5500m付近に湿潤なところがあります。(気温(右のグラフ)と露点温度(左のグラフ)が近づいているところ)
ここで雲の発生があると思われます。
下層は高度的に下層雲で、上層は中層雲だと思われます。
写真の雲は目視で5000m級の高度なので、エマグラムとほぼ合います。

この5500m付近から上層は115ノット(約57m/s)以上の風が吹いており、かなりの強風です。
その下層では90ノット(45m/s)ですので、上下でかなりの風速差があります。

このような風速差があるときは性質の違う空気が重なっていることが多く、
大気も波を打つので波状雲の発生につながったと思われます。

そして、風が強いのでレンズ状の波状雲となったと考えます。






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(工事中)


〜関東地方南岸部に発生する波状雲〜

1.関東からみて高気圧が北に偏り北東気流となったとき、その上にさらに南西の風が吹く時
2.寒候期に中部山岳を吹き越えられずに北周りと南回りに分流した風が関東南岸部でぶつかる時(にできる雲の端部分)
3.関東南岸に発生した地形性の低気圧(による雲の端部分)
4.東シナ海に前線を伴った低気圧がある時、東に抜けた高気圧からの南東風と低気圧に吹き込む北東気流による沿岸前線

などさまざまなパターンがあります。

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