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断層状の雲と下降流
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層状に拡がった雲がぱっかりと割れたように
晴れと曇りの境がはっきりとなることがあります。
このような雲を
俗称で断層状の雲、断層雲などと呼ばれています。

この断層状の雲のできやすい気象の状態を紹介いたします。

高積雲の隙間雲(俗称:断層状の雲)
写真は高積雲。くっきりと分かれている断層状になっています。



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気象学上では断層状という雲の分類はありません。
強いていうなら隙間雲(すきまぐも)という変種の中に入る
のではないかと思われます。



下層の風の発散(風が吹き出すように離れていくところ)や風の収束(風が集まってくるところ)、
鉛直流(上下方向の空気の流れ)の動向など、色々な要因が重なりあっているので
複雑なメカニズムをとっていると思われます。

今の時点で勉強してわかっていることを書かせていただきましたが、さらに勉強を続けて間違いが見つかったり
新たなことが理解出来た時にその都度書きなおしますので
ご了承ください。よろしくお願い致します。



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〜〜断層状の雲が発生する主な要因〜〜

1.気圧の谷通過時、トラフ(気圧の谷)後面の大気の沈降域(下降流域)で現れやすい。


トラフ通過後に高気圧が張り出し、下降気流になると断熱圧縮で気温が高くなります。
それにより、逆転層の高度が下がり雲の雲頂高度が低くなって全体として雲が薄くなります。
その過程で雲にひびが入り、断層状になって雲が消散に向かうことが多いです。



この説明は日本航空機操縦士協会からでている半年ごとに更新される書籍「AIM-J」の気象の章、第8章の874「雲の形から得られる気象情報」に
イラスト入りで載っています。
日本航空機操縦士協会JAPA各種書籍





2.地上付近の風の発散域や海上での冷たい空気があると、雲がそれ以上拡がらずに下降流に接して消散し、断層状になりやすい。



そのほか様々な複合的な要因が考えられますが、いずれにせよ下降流と接するところに発生しやすい傾向があります。

この説明は雲の写真集「高度1万メートルから見た雲たち」(今井正子(写真・文)・綾 一(解説) 成山堂書店、2000年)
P56「高積雲の割れ目」の項目に載っています。




3.上空に逆転層や安定層があると雲の雲頂高度が抑えられて平らになり、断層状に見えやすい。


☆冬型の気圧配置の時に発生することが多いです。
 西からの高気圧の張り出しにより下降流域となり
 断熱圧縮により気温が上昇し沈降性の逆転層ができやすく、雲頂高度が抑えられる事が多いです。

☆朝方や夕方は対流が抑えられ、雲頂が平らになり層状の雲になりやすいです。
 昼には積雲だった雲が夕方には層積雲になることも多いです。






4.ジェット巻雲(シーラスストリークなど)は上空のジェット気流に沿ってかなりまっすぐな巻雲の帯になるので、
 地上から見た時に断層状の上層雲になっていることが多い。

 衛星雲画像(上層雲の解析は赤外画像がよくみえます)でみるとすぐわかります。

 シーラスストリーク:衛星雲画像の用語で、筋状に細長くのびる巻雲のことジェット気流に沿って発生。
 ↓こちらに詳しく説明されています。よろしければどうぞ。
気象衛星画像の解析と利用」から一部PDF(H12年)



☆さらに地形性巻雲が発生した時に山の稜線にそってパッキリ分かれて雲と空の境目がはっきりする時があります。
 この雲は長時間同じ位置にずっとあるようにみえる定常波なので地震雲と間違えられやすいです。

(ちなみに地形性巻雲は地上からみると波状雲になっていることもあります。さらにその下層に高積雲などの
 レンズ雲が伴っていることもあります。)

・地形性巻雲…衛星雲画像の用語で、山脈の風下側に発生する停滞性(ずっと動かないようにみえる)巻雲のこと
  
(「気象庁衛星画像の解析と利用」から抜粋)     
    地上から見ると巻層雲や巻積雲、濃い巻雲にみえることが多いです。

 地形性巻雲↓
気象衛星画像の解析と利用」から一部PDF(H12年)

地形性巻雲を地上から見た時の写真↓
濃密な巻層雲になっています。
地形性巻雲
この写真では山の稜線に沿ってきれいに空と雲が分かれていないですが、はっきり分かれることも多いです。


「今日の雲」のページ←断層状の雲のことも少し書いてあります。
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よく地震雲と間違われていますが、さほど珍しい雲ではありません。
ですが、かなりスパッと雲が切れて分かれているので
初めて見た人はドキッとすると思います。

前置きが長くなりましたが、いくつか天気図などで断層状の雲になりやすい状態を紹介していきます。




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〜〜〜気圧の谷通過時にできる断層状の雲〜〜〜


2010年10月16日 9:00JST(日本時間)東京都板橋区


日本の南海上にある秋雨前線に発生した低気圧が東進し、日本の東海上に抜けた後に
ジェット巻雲と共に発生した高積雲の断層状になった雲です。
この日はジェット気流が強かった記憶があります。

よくみると、穴あき雲みたいになっています。
上空にジェット巻雲があるので、氷粒子の雲粒が高積雲の高度に降りて来て
過冷却水滴でできていると思われる高積雲と接触したと仮定すると
氷と水の飽和水蒸気圧の違いから、上から落ちてきた氷粒子が周りの水滴を取り入れて
成長して結果として蒸発した。。。ような感じを思わせる雲です。

高積雲の上に巻層雲などの上層雲があるとこういうこともあり得ると思います。

「雲のカタログ」を執筆した気象予報士さんブログ「雲三昧」より〜凍る高積雲穴あき雲〜
 余談ですが、私もこの本愛用してます。。。。




2010.10.16AC波状


(気象庁の「日々の天気図」から抜粋)
2010.10/15〜16 9:00JST地上天気図↓
地上天気図15日地上天気図16日
秋雨前線上の低気圧(日本海にも低気圧があるので二つ玉低気圧)が東進し、
西から移動性高気圧が張り出してきています。

(仙台市科学館 「お天気アイ」から)←気象衛星赤外画像アーカイブ
2010.10/16 9:00JST
衛星雲画像
ちょっと落書きしたので見にくいですが、日本の南側沿岸部にはジェット気流がかかっています。
雲の形でおおまかにジェット気流を判断できます。
トランスバースライン(衛星雲画像の用語で巻雲が流れの方向に直角に波状に並ぶ雲…
気象衛星画像の解析と利用」から一部PDF(H12年)
が何本も見えます。
さらに中層の雲も見えます(真っ白ではなく少し灰色がかった白色)

関東地方に注目すると、トランスバースラインがかかっているので、
上空に風速のシアーによる転移層があると思われます。
(トランスバースラインはジェット気流下層の上層の前線(転移層)付近で現れることが多いので)

高積雲は前線由来の雲だというのが衛星雲画像と地上天気図の前線の位置関係から読み取れます。
(この秋雨前線(停滞前線)は本州から離れていますが、前線面が北側に傾いているのでその面で雲が発生しているので
北側にも雲ができています。)


ここで鉛直方向のデータをみてみます。
衛星画像でみると観測地である館野も同じような雲がかかっているのでデータとして参考にします。
エマグラム
ワイオミング大学のデータを使用します。
約7400mくらいから上空のの中層・高層で湿っています。
(右のグラフ(気温)と左のグラフ(露点温度)がくっつきそうになっていたり近づいているので)

雲で言うと中層雲・上層雲にあたるので、写真の雲と合致します。

丁度7400mくらいのところは逆転層になっていて、その下層はかなり乾燥しており、上空では湿って雲の発生があることから
南海上にある前線の前線面にあたると思われます。
風をみても115ノットがマックスでジェット気流(あるいは強風域)の下層にあたり、衛星雲画像から確認した
トランスバースラインは転移層(上空の前線)で発生したと考えられるので
雲は前線由来であることがわかります。

ジェット気流の高緯度側(北側)はトラフ後面の乾燥域・下降流域であることから、
その下降流に接したところで断層状の雲ができたと思われます。





私の説明では不十分なところが多いので、ジェット巻雲の発生メカニズムや周辺の雲の発生など書かれた
読み物を見つけたので良かったらみて下さい。↓

日本気象学会 会誌 「天気」vol.53,No.12「お天気の見方・楽しみ方(7)」よりPDF


数式がまったく無く、図解で丁寧に一般向けに解説されているので
とってもわかりやすいと思います。でも、気象をはじめて勉強する人には専門用語が多いので
わからないところもあるかもしれませんが、これはおすすめです!

気象の世界では有名な小倉義光氏も執筆者のひとりとなっています。



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〜地上の風の発散域や収束域の兼ね合いでできた断層状の雲〜

2010年1月30日 7:00JST 羽田空港

関東南海上にできる風のシアーラインの影響でできる雲の端が断層のようになっている雲
層積雲
寒候期(寒い季節)になると関東地方は南海上の風シアーの影響でできる雲が平野部に拡がり、
特に午前中に曇りやすくなる傾向があります。

この日は関東南部で雲はとまっていて、それ以上北部には拡がりませんでした。

(気象庁の「日々の天気図」から抜粋)
2010.1/30 9:00JST地上天気図↓
天気図

弱い冬型の気圧配置になっています。
日本の南側沿岸部(特に東海〜関東沖)は等圧線がへこんでおり、気圧の谷のようになっています。
これは中部山岳を迂回するように風が地形の影響で曲がって流れる影響が強く出ていることが多いです。


(仙台市科学館 「お天気アイ」から)←気象衛星赤外画像アーカイブ
2010.1/30 7:00JST
衛星雲画像
衛星雲画像に落書きして少し見にくいですが、破線で囲ってあるところがだいたいシアーラインに伴う雲になります。

これは北寄りの風が中部山岳を越えられずに2つに分かれて分流した風が北側からと南側からの西寄りの風が海上で
ぶつかって発生する雲です。
2つ種類があり、「なまこ型」と「くらげ型」です。上の雲はなまこ型に似ています。

この雲が関東の南部にかかっています。

雲が北部に拡がらないのは地上の風の流れが影響していると思われます。
2010.1/30の7:00〜9:00あたりの平均的なおおまかな風の流れを過去のアメダスデータで調べてみました。
地上の風の流れ
この日は弱い冬型の気圧配置で北寄りの風が卓越していましたが、
東京都の北部から千葉北部あたりは弱い西寄りの風になっていて、風の流れがよどんでいるような感じでした。
このような風の速度収束のような感じの時はここらへんで雲が発生していることが多いです。

しかし、北部は南部より強い冷たい北寄りの風が吹いていたので高気圧の下降流を助ける感じになっており、
南部も海に近いことから地形効果の摩擦があまりないこともあってか風が強めでした。

ここで上空の風などをエマグラムでみてみます。

エマグラム
ワイオミング大学のデータを拝借致します。それに落書きしてあります。
茨城の館野でも雲の発生があったようです(気温Tと露点温度Tdがくっついたとこが雲発生してるところ:湿り域)

この関東特有の雲が出ている時はほとんどその発生している近傍の高度で南西の風が認められます。
相対的に暖かい風と思われます。




ここで地上の風の流れを再度みてみます。

地上風の弱い西風の区域で上昇流があったかもしれません。
雲が高積雲ということからベナール型対流なので、下層からの弱い上昇流が必要になってきますので
その影響が効いている可能性もあります。しかし、南側もこのようなベナール対流であったことを
思い出したのでその効果は違うような感じです。
(もう少し上空の風のデータがあれば詳しく調べることができますが今回はデータがないので深い考察は出来ません。)

その北側はひろい範囲で下降流域と考えると局地的になんらかの対流ができて、
最終的に雲の発散が卓越して断層状の雲になったのではと思われます。






上層の南西風も関わってきているので
詳しく調べればかなり面白いと思いました。

この風シアーラインに伴う「なまこ型」タイプの雲は関東北部まで雲が拡がらないことが多いので
やっぱりなんらかの作用で下降流があるとみています。
(今度専門家の方に聞いてみます)


データ不足で申し訳ないです。今後事例が観測されましたらデータを揃えて解析したいと思います。




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 2011年1月3日 12:30JST(日本時間)東京都板橋区

冬の寒い季節、冬型の気圧配置がゆるんで日本の南海上に小さな低気圧が発生・東進してくるときに
発生した、波状高積雲の断層状になった雲です。

この時の気象の状態を天気図などで調べていきます。


波状高積雲の断層状の雲
(写真は高度の低い高積雲の波状雲ですが、雲の端がすっぱり切れたようになっています)

まず、波状雲は空気密度の違う空気が接するときや、上下で風向・風速が違う時などに発生する特徴があります。

南海上の低気圧が東進してきていたので湿った空気との境で波状雲が出来たと思われます。


(気象庁の「日々の天気図」から抜粋)
2011.1/3 9:00JST地上天気図↓
2010.1/3地上天気図
冬型が緩んで本州付近は弱い高気圧の中にありますが、日本の南海上に小さな低気圧があります。

(仙台市科学館 「お天気アイ」から)←気象衛星赤外画像アーカイブ
2011.1/3 12:00JST
2011.1/3衛星雲画像IR
衛星雲画像でこの低気圧の雲をみてみると南の海上は雲がかかっています。
関東にはその影響もあるような中層の雲がかかっています。(赤外雲画像の色が灰白色で真っ白ではないので)

写真の雲は高積雲(中層の雲に分類…は発生高度ごとに下層雲・中層雲・上層雲とよぶこともあります)なので
衛星の雲と合わせてみても、納得いきます。
やはり低気圧由来の雲が関東にかかってきているので、湿った空気も流れ込んできていることから密度の違う空気との接触
がある可能性が大きいので波状雲の発生があったのではと思われます。
経験則ですが、南海上の低気圧の雲の端に波状雲ができやすい傾向があります。

(写真が古く、高層天気図が入手できずデータ不足で申し訳ありませんが、もう少しウィンドプロファイラとか
高層の気象データをみれば詳しくわかると思います。
写真は12:30なので、9:00のエマグラムデータは参考にならないと判断したので使いませんでした。
しかも高層気象観測地は雲の発生が無いことからも使用しませんでした。)




そして、断層状の雲になったのは地上の風の収束・発散も一因だったと思われます。

2011.1/3の12:00前後の風の流れを過去のアメダスデータで調べたところ、
下図のように茨城から東寄りの風が吹き、
関東北部は山谷風や地形が影響して(山に沿って風が湾曲しやすい)南よりの風になっており、
千葉や東京・神奈川では南側の低気圧の影響もあり(低気圧へ吹き込む風は反時計回りなので関東南部は低気圧の北側に位置するということから)
北東よりの風になっているような風の流れになっていました。
関東の風の流れ
関東では午後になると山谷風・地形などの影響でこのような風の流れになることがあります。

経験的にこの流れは南部で曇る傾向がありますが、これは南部が北東よりの風により、
湿った空気が流れ込みやすく関東南部で曇りやすくなるパターンです。

さらに埼玉南部から茨城南部にかけて
風の方向が扇状に流れるかたちなので空気の発散があったと思われます。
この発散域で空気を補うために下降流が発生して断層状になったと思われます。


写真は東京の板橋区からの撮影ですので、東京でも北部にあたります。
ということは丁度発散域にあたり、下降流に接して断層状になったと考えています。

けっこう関東はここらへんで雲が急に無くなる時が多いです。
そこでアメダスのデータをみると発散する流れがあることが多々あります。




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断層状の雲は奥が深いですね。。
もう少し勉強をして雲を観測してデータを揃えて解析したいと思います。

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